鳥の死骸はどうやって手に入れてるの?-剥製標本について-
みなさまこんにちは。鱗音の鳥類諸標本作製責任者、こりんです。
今日はとても大切なお話をしたいと思います。少し長くなりますが、目を通していただけると幸いです。
最近、というにはあまりにも以前からですが、鳥の標本を公開するたびに、このようなお問い合わせをうけることが度々ありました。
「鳥を標本のために殺しているんですか?」
「かすみ網などを使って捕獲するんですか?」
実際に直接このようにお問い合わせいただけることは幸いなことだと思っております。
何年も前は「あいつは標本のために鳥をわざと殺している」と噂を立てられ、否定の機会さえ与えられませんでした。苦い苦い思い出です。
さて、今回はこのように皆様が感じていらっしゃる、
どのようにして鳥の死骸を入手しているのか
について、お話しさせて頂きたいと思います。
まず申し上げますと、
標本を作るためにわざと鳥を殺すことはありません。
鱗音では虫の標本も扱っているため、虫と同じように鳥も捕獲して殺していると思われるかもしれませんが、そもそも鳥類の捕獲は(一部の場合を除き)法律で禁止されています。
これは、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に記されているとおりです。
では、鱗音ではどうやって鳥の死骸を入手しているのかと言いますと、
①基本的に自力で歩いて死骸を探します。
実際に綺麗な死骸を拾えるのは1年に1〜2回ですが、鳥はさまざまな原因で死んでいます。
・一番多いのは交通事故です。走行中の車に接触、あるいは撥ね飛ばされて死んでいます。
このような死骸は頭の出血の他に体側にも出血痕がある場合が多いです。
・二番目に多いのは窓にぶつかっての死亡です。窓に映り込む景色の反射を「向こうに行ける」と勘違いした鳥が速度を落とさずに飛び込んでぶつかり、死んでしまいます。
このような死骸は頭蓋骨に陥没があったり、脳内の出血が多く血を吐いていたりします。
・三番目に多いのは閉鎖空間に迷い込んでの衰弱死です。綺麗な状態で死んでいることが多いと思います。
・その他の原因としては、病死、中毒死、捕食者による捕殺などがあげられます。
交通事故がおこりやすい箇所、窓への飛び込みが多い箇所、半閉鎖空間で鳥が衰弱死しやすい箇所など、歩いていると一定の箇所で立て続けに拾うことも起こります。
さて、先ほど「基本的に」と申し上げましたので、例外も申し上げていきます。
②「献体」として第三者から譲り受けます。
さきほど申し上げた通り、鳥はさまざまな理由で野外で死んでいます。これを、我々鱗音のメンバー以外の方が拾い上げることも多々あります。
こういった場合、死んでしまった鳥たちは送料着払いで鱗音の元に届けられてきます。
③害鳥駆除された個体を猟師さんから譲り受けます。
先に申し上げた「鳥類の捕獲は(一部の場合を除き)法律で禁止されています」の「一部の場合」に含まれますが、猟期に猟区内で適正に狩猟された個体が鱗音に入ってくることもあります。
野鳥が害鳥とされる理由はさまざまです。米を食べるスズメ、畑を荒らすカラスにヒヨドリ、ムクドリ、田んぼを荒らすカモなどです。
猟師、猟区、猟期外でも、サギ類やハト類などは適切な許可を得て駆除される場合があります。(昔、サギの駆除中に誤ってコウノトリを撃った事件もありましたが……割愛します。)
このような中で、ごく少ない場合ですが鱗音が死骸を譲り受ける場合もあります。
④ヒヨコ、雛ウズラについて
鱗音で扱っているヒヨコ、雛ウズラの剥製標本は、すべて爬虫類の餌用として販売されているものから作られています。
我々の飼育している蛇はだいぶ高齢のため消化能力が落ち、ヒヨコやウズラの足や羽を消化することができなくなってきました。
そこで鳥類担当が皮を剥き、中身を蛇に与え、外側を剥製標本として提供させていただいています。
いかがでしたでしょうか。鱗音ではこのように鳥の死骸を入手しています。
皆様の疑問がひとつでも晴れると幸いです。これからも鱗音を宜しくお願い致します。
次回は、標本を作るまでの鳥類担当の儀式についてお話しさせていただければと思います。
この個体も、窓にぶつかって死んでしまった個体です。
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