冬の終わりを告げた、部分白化のツグミ

皆様こんばんは。鳥類部門担当、こりんです。

本日の記事はこの春に観察した部分白化のツグミに関してです。


今年の春、まだ風の冷たい時期に、散歩の途中で奇妙なツグミに出会いました。

今飛んだ鳥……白くなかった?

その日はもう鳥がうまく見えないほどの夕暮れ。翌日、同じ場所にカメラを持って出掛けてみると……

いました。体のいろいろな部位の羽が白抜けした、部分白化のツグミです。

本来のツグミの体色はこちら。

茶褐色が強く、顔も眉斑と外頬線、喉以外は褐色なことがわかります。

それに対して観察できた部分白化の個体は、風切羽や体羽の一部、とくに顔まわりの羽が白くなっています。

ツグミの特徴のひとつである胸の「よだれかけ」の模様も、白い羽に侵食されて影もありません。

背中から見ると、風切羽の白抜けがよく分かります。

この子は成鳥ですが、やはり飛んだ時の白が目立つぶん猛禽などに狙われやすいようで、絶対に飛ぼうとしませんでした。

なにかあると物陰に走り込んでいき、危険が去るとひょっこり顔を出します。

左:通常色のツグミ  右:部分白化のツグミ

オオタカが飛んだので2羽とも身を屈めているところ

なるべく物陰の近いところで採餌をしていました。


この個体が見られたのはほんの2週間足らずのことで、ある日を境にこのあたり一帯のツグミたちと共に姿を消しました。北へ渡って行ったのだと思います。

そのあと1週間ほどで河津桜の花芽がほころび、春を告げる花の香りに、ツグミたちの無事を祈りました。

今年の冬、あるいはつぎの春になるその前に、またこの子に会えるといいな、と思っています。

またいつか。

鱗音 -scaletone-

標本作成ユニット「鱗音 -scaletone-」公式サイトです。 主に昆虫の定格標本、動態標本、魚類・両生類・爬虫類を中心とした透明化骨格標本、鳥類を中心とした剥製標本、各部位の標本、羽の額装標本などを扱っています。

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