キンケウスバイラガ飼育記(未完)
2022年の5月11日、長野県の山中を歩いている時に鳥担当に呼び止められました。
「ねぇ、なんかミノウスバみたいな蛾がいたよ?」
5月にミノウスバ?そんなわけあるまい。
写真を見せてもらうと…
なんだこれ見たことねぇ…
とりあえず「こういうよくわかんないのは採集しとくんだよ!(焦)」と現場に戻らせ、いまだ交尾中だったこの蛾を採集。
正体はキンケウスバイラガ
国内でもあまり採集例のない非常に珍しい蛾とのことでした。やったね。
いやしかし、なんで標本にしちゃうとこうショボくれてしまうのかね蛾は…
虫の腹部等を生時のまま標本にするのは永遠の課題ですね。
ところでこのキンケウスバイラガ、採集して自宅に持ち帰るまでに産卵をしていました。
(卵の画像は撮影を忘れました)
珍しい種ということで、うまく育てて標本に…さらには累代して…などと浅はかに考え飼育してみることに。
んで、5月18日に孵化した幼虫がこれ
ちっさ…
シャーレの方眼が1cmなのでどのくらい小さいかがわかるかと思います。全長約1mm。
早速嫌な予感しかしない…
食草はシラカバやドロノキなどとされているようなので、急遽シラカバの栽培品種 ジャクモンティを購入して飼育開始しました。
また、どうせイラガなのだから実際は広食性なのでは?と、試しに桜(ソメイヨシノ)も与えてみました。
意外と食べるもんだな…
ただし、ここで問題が発生。
キンケウスバイラガの若齢幼虫は湿度にかなり弱いらしく、幼虫がバタバタと死に始めました。嫌な予感的中。
桜での飼育もここで一時中断。もしかしたら全ステージ桜でイケるかもしれませんが、謎のまま…
仕方がないので生き残った幼虫をジャクモンティの鉢植えに直接付けて飼育を再開。
2令になりました
2令幼虫からはイラガ科にありがちな背中のイボイボが爆誕。
2日ほどもすると眠に入りました。丸っこくなって脱皮を待ちます。
眠に入ってから1-2日で脱皮し、3令になりました。
相変わらず葉脈というか葉の表側の皮一枚を食べて成長しますが、徐々に葉脈も食べるようになってきました。葉の減り方が速くなってヤバい。
背中のイボイボにもトゲらしきものが見えてきます。(ピンボケですまぬ…)
5月29日 あっという間に4令になりました。4令からは表面がマットな感じの質感に。
葉っぱをもしゃもしゃ食べます。かわいいね。
葉脈も残さずバリバリ食べていきます。いよいよ鉢植えがピンチ。
4眠に入りました。グミみたいな質感で美味しそう。
ところでこの毛、毒あるの?ないの?
…気になりますよねぇ?
僕も気になったので意を決して触ってみましたが、意外にも柔らかく刺さりませんでした。どうも毒はなさそうです。
5令幼虫、終齢です。
ジャクモンティは食いつくされてしまったのでポプラの葉で代用。問題なく食べます。
終齢の最大サイズで約1.5cm。かなり小さいです。
さて、あとはどんな風な繭を作るか楽しみ。
6月5日 終齢になってから4日ほど
ポプラの葉に幼虫が一つもいません。ナンデ!?
蛹になるために脱走したのかと思い部屋中を探しますが見当たりません。
やばいどこ行った…
てっきり枝上に眉を作る、いわゆるイラガの繭を想像していたのでかなり慌てました。
どこにいたのかというと、正解は植木鉢の土の中。
お前イラガなのに土中で繭になるんか!知らなかった!
繭の大きさは楕円形の長径で1cm程度。油紙のような質感の薄いこげ茶色をした繭を作り、外側を土でコーティングするようです。
このまま春まで土の中で過ごすようです。
え?ほぼ1年もこのまま保管しなきゃいけないの?
そういう蛾ってたいてい蛹の管理が難しいんじゃなかったっけ…
嫌な予感再び的中。翌春、残念ながらこの繭が羽化することはありませんでした。
繭を暴いて蛹の写真が撮影できないかとも考えましたが、ドロドロに溶けてしまっており観察に耐えるものではありませんでした。
おそらくシラカバ林のリター層で蛹になると考えられることから、湿度や温度に厳しい管理が必要だったものだと思われます。
ギフチョウの蛹の管理とかが参考になりそう。
…というわけで未完に終わってしまった飼育記ですが、どなたかの参考になれば幸いです。
今回わかったことをまとめると
・初令での消耗が激しい、特に蒸れは厳禁
・飼育は既報の通りシラカバ、ポプラが使える
・サクラなどで代用の可能性あり(未検証)
・2令以降の幼虫の飼育は難しくない
・蛹の管理方法が肝心かなめ
またどこかで採集する機会があったらチャレンジしたいですね。
もうこの先の人生で二度と目にすることがない気もするけれども。
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